はじめに:行政書士法改正が企業経営に与える影響とは
2026年1月、行政書士法が改正されました。「行政書士の法律が変わっても、うちの会社には関係ない」と思っていませんか?
実は、この改正は許認可申請や補助金申請を行う企業、特に中小企業にとって見逃せない内容です。なぜなら、無資格者への依頼が罰則対象となり、企業側も処罰されるリスクがあるからです。
本記事では、経営コンサルタント・行政書士・生成AIアドバイザーとして現場で企業支援に携わる筆者が、今回の法改正のポイントをわかりやすく解説し、企業が今すぐ取るべき対策をお伝えします。
1. 行政書士法改正の背景:なぜ今、法改正が必要だったのか
無資格業者による申請代行トラブルの急増
今回の行政書士法改正の最大の理由は、無資格者による申請代行トラブルの急増です。
特に新型コロナウイルス感染拡大以降、事業再構築補助金や持続化補助金など、大規模な補助金制度が次々と公募されました。それに伴い、「補助金申請サポート」「コンサルティング」といった名目で、行政書士資格を持たない業者が申請代行を行うケースが相次ぎました。
無資格者による申請代行の問題点は以下の通りです:
- 書類の不備や法令違反により申請が却下される
- 虚偽記載や不正受給につながるリスクがある
- 企業の信用が損なわれる
- 補助金が不支給になるだけでなく、今後の申請にも悪影響
こうした状況を受け、行政書士の業務範囲を明確化し、無資格者による業務を厳しく取り締まるための法改正が行われました。
行政手続きのデジタル化への対応
もう一つの背景が、行政手続きのデジタル化です。
マイナポータル連携、e-Tax、電子申請システムなど、行政手続きはますますデジタル化が進んでいます。しかし、デジタルに不慣れな事業者も多く、専門家によるサポートの重要性が高まっています。
今回の改正では、行政書士に対して「デジタル対応の努力義務」が明文化され、時代に即した専門家像が求められるようになりました。
2. 【重要】行政書士法改正の5つのポイント
① 使命の明文化:行政書士の役割が明確に
改正前は「目的」とされていた部分が、「使命」に変更されました。
これは、弁護士法や税理士法と同様に、行政書士という資格の社会的意義を明確にするためです。「国民の権利利益の実現に資する」という使命が法律上明記されたことで、行政書士の責任範囲と役割がより明確になりました。
企業への影響:
行政書士の社会的認知度が向上し、信頼できる専門家として依頼しやすくなります。
② 職責の新設とデジタル対応の努力義務
今回の改正で新たに「職責」が設けられ、以下の内容が明文化されました:
- 常に品位を保持すること
- 業務に関する法令および実務に精通すること
- 公正かつ誠実に業務を行うこと
- デジタル社会への対応(努力義務)
特に注目すべきは、士業で初めて「デジタル対応」が努力義務として明記されたことです。
企業への影響:
電子申請や書類のデジタル化に対応できる行政書士が増え、企業側の業務効率化が期待できます。
③ 特定行政書士の業務範囲拡大
特定行政書士とは、行政不服申立ての代理業務を行える行政書士のことです。
改正前:
自分が作成した申請書類に関する不服申立てのみ対応可能
改正後:
他の行政書士や本人が作成した申請書類についても不服申立てが可能
これにより、申請から不服申立てまで一貫したサポートが受けられるようになりました。
企業への影響:
許認可申請が不許可になった場合でも、同じ専門家に継続して相談でき、対応がスムーズになります。
④ 業務制限規定の明確化:行政書士の独占業務とは
これまでグレーゾーンとされていた業務が、行政書士の独占業務として明文化されました。
行政書士しかできない業務:
- 官公署に提出する書類の作成
- 許認可申請書類の作成・提出代行
- 補助金申請書類の作成
ただし、「助言」「相談」「支援」は行政書士資格がなくても可能です。
企業への影響:
「コンサルティング料」名目で無資格者が書類作成を行っていた場合、企業側も罰則対象となるリスクがあります。
⑤ 両罰規定の整備・強化:企業も罰則対象に
今回の改正で最も注意すべきなのが、両罰規定の強化です。
両罰規定とは:
無資格者が行政書士業務を行った場合、その無資格者だけでなく、依頼した企業(法人)も罰則対象となる制度
罰則内容:
- 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 法人にも罰金刑が科される
企業への影響:
「知らなかった」では済まされません。依頼先の資格確認が企業の義務となります。
3. 企業が今すぐ確認すべき3つのチェックポイント
✅ チェック① 委託している相手は行政書士資格を持っているか?
まず、現在業務を委託している相手が、正式な行政書士資格を持っているかを確認しましょう。
確認方法:
- 日本行政書士会連合会の「行政書士検索システム」で検索
- 行政書士登録証の提示を求める
- 契約書に行政書士登録番号が記載されているか確認
✅ チェック② 特定行政書士の資格はあるか?
許認可申請を依頼する場合、不許可時の対応も考慮し、特定行政書士の資格を持っているかも確認しましょう。
特定行政書士であれば、申請から不服申立てまで一貫してサポートを受けられます。
✅ チェック③ デジタル対応は可能か?
電子申請やマイナポータル連携など、デジタル対応ができる行政書士かも重要なポイントです。
デジタル対応ができれば、申請手続きがスムーズになり、時間とコストの削減につながります。
4. 無資格業者に依頼するリスクとは?
リスク① 補助金が不支給になる
無資格者が作成した書類は、法令に基づいていない可能性があり、申請が却下されるリスクがあります。
補助金は審査が厳しく、書類不備があればすぐに不支給となります。
リスク② 企業が罰則対象となる
両罰規定により、企業側も1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。
「安いから」「知人の紹介だから」という理由で無資格者に依頼することは、企業にとって大きなリスクです。
リスク③ 企業の信用が損なわれる
虚偽記載や不正受給が発覚すれば、企業の社会的信用が大きく損なわれます。
取引先や金融機関からの信頼を失い、事業継続が困難になる可能性もあります。
5. 経営者が今すぐ取るべき5つの対策
対策① 委託先の資格を今すぐ確認する
現在、補助金申請や許認可申請を外部に委託している場合、今すぐ相手の資格を確認しましょう。
無資格者に依頼していた場合、速やかに契約を見直す必要があります。
対策② 信頼できる行政書士を選ぶ
行政書士を選ぶ際のポイント:
- 実績と専門分野(補助金、許認可など)
- 特定行政書士の資格の有無
- デジタル対応の可否
- コミュニケーションの取りやすさ
- 料金体系の明確さ
対策③ 顧問契約を検討する
スポット依頼ではなく、顧問契約を結ぶことで、継続的なサポートを受けられます。
顧問契約のメリット:
- 相談しやすい関係性を構築できる
- 法改正や制度変更の情報をいち早く入手できる
- 緊急時に迅速な対応が可能
対策④ 社内の申請フローを見直す
誰が、どのタイミングで、どの専門家に依頼するのか、社内の申請フローを明確化しましょう。
担当者任せにせず、経営層が関与する体制を整えることが重要です。
対策⑤ デジタル化への対応を進める
行政手続きのデジタル化は今後さらに加速します。
企業側も電子申請に対応できる体制を整え、専門家と連携しながらDXを進めていきましょう。
6. 生成AIと行政書士業務の未来
筆者は生成AIアドバイザーとしても活動していますが、生成AIと行政書士業務の融合は今後ますます進むと考えています。
生成AIができること
- 定型書類の下書き作成
- 過去の申請事例の検索・分析
- 書類のチェックと修正提案
- FAQへの自動回答
生成AIができないこと
- 法的責任を伴う最終判断
- クライアントとの信頼関係構築
- 複雑な案件への柔軟な対応
- 倫理的・人間的な配慮
つまり、生成AIは行政書士の業務を支援するツールであり、専門家の役割がなくなるわけではありません。
むしろ、AIを活用できる行政書士こそが、これからの時代に求められる存在です。
7. まとめ:行政書士法改正を機に、専門家との関係を見直そう
2026年の行政書士法改正は、企業にとって「専門家との付き合い方を見直す絶好の機会」です。
今回のポイントをおさらい:
✅ 無資格者への依頼は企業も罰則対象
✅ 特定行政書士の業務範囲が拡大
✅ デジタル対応が努力義務化
✅ 委託先の資格確認は企業の義務
✅ 顧問契約で継続的なサポート体制を
「安さ」だけで専門家を選ぶ時代は終わりました。
これからは、「法改正に対応しているか」「デジタル対応ができるか」「長期的に伴走してくれるか」といった視点で、信頼できるパートナーを見極めることが、企業の成長と持続可能性を左右します。
ぜひこの機会に、自社の申請業務フローと専門家との関係性を見直してみてください。
参考記事:
https://sogyotecho.jp/gyoseishoshi-law-revision-2026/

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